画家・須飼秀和のこと,いつか見た蒼い空,株式会社シーズ・プランニング

画家としての原点

須飼秀和が絵で気持ちを伝えたいと思ったのは二十歳の時。夏の青空のもと四国、九州を旅し、行く先々でたくさんの人とふれあい、たくさんの人と語り合い、何気ない気遣いに心打たれました。そして、彼らが暮らす何がない風景は、見ているだけで心がやさしくなるような気持ちにさせてくれることに気づきました。彼は、このやさしい風景とあたたかい気持ちを絵で表現したいと思い、描きはじめました。
そして、描き出された絵は彼の特徴である印象的な「青空」と郷愁を誘う風景になりました。

人の想いを絵にする

2008年4月に毎日新聞の夕刊で連載が始まった「帰りたい 私だけのふるさと」の挿絵は須飼秀和の代表作の一つですが、この仕事が須飼秀和を画家として大きく成長させる転機になりました。
それまで、置いてある物で人々の営みや人物を想像してもらいたかったので、絵の中に人はほとんど人は描きませんでした。しかし、「帰りたい 私だけのふるさと」は、人間の物語です。当然多くの人が絵の中に登場します。そして何よりも大変だったのは、毎回主人公の若き日の自叙伝を、主人公の気持ちになって、わずかな資料を元に描いていかなければならないということでした。その作業を須飼秀和は2012年5月までほぼ毎週、計205回やり遂げました。
もちろん彼だけの力ではありませんが、この連載が4年間も続いたことをみても、いかに好評であったかがわかります。須飼秀和はこの仕事を通して、人と向き合い、想いを形にするという、かけがえのない宝物を獲得しました。

画家・須飼秀和のこと,いつか見た蒼い空,株式会社シーズ・プランニング

評価が形になった

この「帰りたい 私だけのふるさと」という作品は、さまざまところで大きな評価を受けました。一つは「南九州魅力発掘大賞」です。第三回、第四回とノミネートされ、第三回では見事大賞を、第四回でも新聞部門賞を受賞しました。
二つ目は岩波書店から2013年3月に刊行された「私だけのふるさと―作家たちの原風景」です。毎日新聞に連載された205回の連載のなかから、作家の原風景を1冊にまとめたものです。この本の装丁にも、須飼秀和の作品が使われました。もちろん本文の挿絵もすべてカラーで掲載され、高い評価を受けました。

新しいものに挑戦し続ける向上心と変わらない情熱

現在、須飼秀和は週刊誌の連載小説への挿絵提供(「ラストレター」さだまさし、週刊朝日)、子ども向け絵本の制作など、精力的に新たな分野に挑戦するなど、忙しい毎日をすごしています。
しかし、その状況においても、彼の絵に対する愚直なまでの誠実さは、画家を志した時から少しも変わっていません。効率良く仕事をこなすという考えは須飼秀和の思考にはありません。例えマッチ箱の大きさの作品であっても、制作時間が無くても、予算が限られていたとしても、彼は大作を制作する時とおなじように構想、取材、制作に取り組んでいます。須飼秀和の絵に対する誠実さは、これからも決して変わることはないでしょう。